電王戦終了(記2017年5月24日)

こうして電王戦は突然幕を閉じた。

AIと人類の戦いの一局面に結論が出たということだろう。

昨年第二期叡王戦トーナメントに羽生善治氏が参戦した時はその潔さに感心したものだった。

昨年韓国の囲碁世界チャンピオン李セドル氏がgoogleAlphaGoに敗れた後、NHKスペシャル『天使か悪魔か羽生善治人工知能を探る』の中で、羽生氏は人工知能の最前線を取材し、私の勝手な推測ではあるが、一昨年には見送った本棋戦への参加を決めたのではなかっただろうか。

ポナンザの開発者山本一成氏は、羽生三冠との対局を望むかどうかという朝日新聞のインタビューに対して、「もし戦えるなら戦いたい。ただ、暴力的なまでに強くなっているので、それを見せつけるのもどうかと思う」と答えていた。それが、現実かもしれない。

ただ、佐藤天彦名人がすっと最後の最後でAIを破って見せることを期待していたのは私だけではなかったろうし、羽生さんなら、と期待する人は少なくないはずである。

羽生氏はかつて、もし神が存在するなら、将棋は結局のところどういうものなのか聞いてみたい、と語っていた。

佐藤康光日本将棋連盟会長も、同朝日新聞のインタビューの中で、将棋というものにまだ新しくより深い部分があることを、AIに教えてもらったと語っていた。

確かに、将棋を登山に例えるなら、人間はこれまで先人が切り開いた登山道をたどって、相手より先に頂上にたどり着くことを競っていたが、AIにはそういう登山道は関係なかった。まるで、ブルドーザーで山を登るかのように、獣道だろうが、断崖絶壁だろうが関係なく、頂上を目指していく。そうやって新たな登山道があることを、今人類に教えてくれているということに過ぎないのではないだろうか。

確かに広大な宇宙とはいえ有限の世界であれば、いずれは答えが出るのだろうし、神はそれを既に知っておられるに違いない。